点呼・チェックの形骸化の防止を!
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今月の都道府県ごとの年末の交通安全運動では、どこも「飲酒運転の撲滅」を掲げていますが、その飲酒運転を防ぐ為に事業所として大事なのが、運転前後の点呼とアルコールチェックです。道路交通法改正によって2022年4月からは業務用ではない白ナンバーを一定台数以上使用する事業所でも運転前後の酒気帯びチェックとその記録の保存が義務づけられ、この12月1日からはアルコール検知器によるチェックも義務づけられました。
しかし、人は毎日行わなければいけないことに対して、次第に慣れ、万が一に備えて行っていることでも何事もないことが続くと合理化しようという気持ちがでてきてしまうものです。形式はあり一応実施しているから言い訳がたつと考えるのでしょうか、事業所によっては運転者が自分で検知器チェックをしたり、運転者同士ですませ、管理者は記録を後から確認するというケースが意外と多く見受けられます。
対面が原則であるため、直行直帰などにも対応できるようスマートフォンやタブレットなどITシステムを活用した対面に代わるリモートチェックも正式に認められているわけですが、事後確認では身代わり検知などを見逃すことになり、点呼・チェックの意味がありません。
その事例として挙げられるのが、今年6月18日に北海道八雲町の国道で起きた畜産会社の大型トラックと都市間高速バスの正面衝突事故です。まだ記憶に新しい方も多いのではないでしょうか?
この5人もの死亡者をだした事故は、捜査の過程で、トラック運転者が前日体調不良であったことと、当日安全運転管理者が休日のため不在で運転者の健康観察がされていなかったことがわかりました。加えてこの畜産会社では、酒気帯びの有無・心拍数・血圧・体温の4つの項目のチェックをすることになっていましたが、これらすべて運転者がセルフチェックで用紙に記入し、管理者が事後確認するという実態となっていたこともわかりました。
点呼やアルコールチェックが形骸化していたことが浮き彫りになったのです。
負担を少なくしようと考えるのは人間の自然な心理ですし、運転者が酒気を帯びての出社をしたり飲酒を起因とする事故を起こしたことも全くなく、事業所との良い信頼関係にあることは喜ばしいことですが、それだけに自己チェックでも大丈夫だという考えに陥りがちな一面もあると思います。しかし、事故や災害というものはまさかと思われるような想定外の状況で発生するものです。対面での点呼やアルコールチェックは事業所の責任として常に必要であるという原点を意識し続けることが形骸化を防止することに繋がります。
ある企業の2022年4月からアルコールチェックとその記録の保存が義務化となったその対象の事業所やその業務に携わっている人1000人に対して行った2023年11月の調査では、形骸化以前に、アルコールチェッカーを使った検査を100%実施している事業所が全体の約3割程度、安全運転管理者に義務付けられている業務内容についても、理解が進んでいないこともあり、100%実施している事業所は同じく約3割という状況であることがわかったそうです。現場が感じている問題点としては「管理者・ドライバーともに業務負担が大きい」という意見が最も多く、アナログ的な方法による運用が7割と主流であるため、事務的作業が負担になっているのではと推察されました。
負担と感じる状況と何のためにどういった業務が必要なのかを理解されていない状況は、そのまま形骸化に繋がる恐れがあります。負担を軽減するためには、ITツールを利用したデジタル化が不可欠と考えられていて、クラウド連携型アルコールチェックサービスなどの導入により、アナログでは難しい基準の明確化やなりすましの防止・自動記録で誤記抑止などができ、走行実態と一元的に把握できるとも言われています。
導入が困難な事業所もあるかと思いますが、形骸化させることのない方法で負担を減らし、事業所としての責任を全うしていきたいですね。
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